東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科麻酔科では2008年からpaperChartを使用しています。導入するにあたり、中古ノート型PCとデスクトップ型マシン1台(新規購入)と無線ルーター2台（新規購入）で始めました。初めはテストとしてスタンドアロンで使用していましたので、セットアップは特に問題なくスムーズに行えました。PC端末と無線端末の設定の方に時間がかかったくらいです。その当時からテルモシリンジポンプも同期して使用していました。
1年間使用してみて、ほとんどトラブルが起きないので（電源が外れていたなどの些細なことだけ）、2009年には中央手術室、回復室、病棟に拡大していきました。現在では日本光電（BSM9100,2300,5000シリーズ）、オムロンコーリン（BP608,BP508）、GE(DASH300)、BIS A2000、Drager 麻酔器、テルモ輸液シリンジポンプ（TE371,351,161）、エドワーズ（Vigileoモニター）、ABL800FLEX（血液ガス）などが完全にリンクしています。ネットワーク工事等は専門業者の方にお願いしましたが、あとはなんとか自分で作っていくことができました。現在大きなトラブルなく使用しています。
paperChartの優れたところは、容易な操作性にあります。手書きの麻酔記録のような麻酔医の思考に沿った操作なので、使用方法を詳しく人に説明しなくても実際に使ってもらえます。セットアップに自信が持てなければサポートしてくれるMLのメンバーに尋ねることが可能です。あるいはセットアップしてくれる業者さんを利用するのも手だと思います。どうか一度手にとって使ってみてください。私ども施設ではいつでも見学を受付けています。
越川正嗣先生(paperChart開発者)との個人的なつながりから，ポンプの情報を自動入力する機能や薬物動態シミュレーションを実装してきました．
当院の概要
バイタルサインモニターはフィリップス社MP90 2台, MP70 7台（手術室9台）MP50（バックアップ・手術室外用など）2台で，ポンプはテルモ社TE371（ディプリフューザー）とレミフェンタニル用TE352です．PCは電子カルテ旧端末を流用し，オンボードシリアルポートには上記モニターを，拡張スロットのシリアルポートにはポンプを接続しています．麻酔器，ビジレオ，ビジランス，インボス，BIS等の情報はVueLinkモジュール＋モニター経由でpaperChartに取込まれます．
インストール先は麻酔器9台以外に，麻酔器付設の電子カルテNote端末,手術室の部門システム端末20台,手術室の電子カルテ端末,麻酔科外来の診察端末4台などです．手術部門システム(クオンシステム社OPE-TOM)のデータサーバーを利用したネットワーク運用で全部屋の麻酔記録が確認でき，PDF出力した麻酔記録を電子カルテに連携しています．
単にモニターからのデータを遅れて浄書するだけに近い麻酔記録システムもありますが，麻酔科医の視点から開発されたpaperChartは機能も豊富で，しかも動作がサクサクとしています．麻酔記録画面の表示幅はスクロールマウスで一瞬に10分から8時間まで変更できます。短時間トレンド表示だと急速なバイタルサインの変化度を容易に把握できて危険予測ができるのは非常に便利です．
データは10秒程度の間隔でフライトレコーダーのように細かく保存され，中央値を表示するためノイズなど外れ値の影響を受けにくく，後から症例を詳細に検討するできる点も大いなる強みです．
私がpaperChartを使用し始めたのは2007年です．麻酔科学会や日本麻酔・集中治療テクノロジー学会で，越川先生が麻酔記録システムpaperChartを発表され，その完成度の高さに感動し日本光電BBS9800に接続したのがきっかけでした．
paperChartの魅力は，シンプルでありながら直感的なインターフェースを持っていることです．商用ソフトのような華美な外見はありませんが，少し操作するだけで，誰でもマニュアルなしで操作できるようになります．そして，システム自体が軽く，最適化された設計となっているため，WindowsXP以降であれば使用するＰＣを選びませんし，非常に動作が安定しており，paperChart自体がフリーズした経験はありません．
初期設定で単に自動麻酔記録システムとして動作させるだけなら，誰でも簡単に使用することができます．その一方で，非常に強力なカスタマイズ機能を有しており，チャートの表示形式，表示項目，計算項目を柔軟に追加することが可能です．病棟名・医師名・薬剤名といった施設固有情報は簡単に設定できます．しかし，カスタマイズを行うための設定ファイルの記述はＰＣ初心者の方には難しく，若干の知識と経験が必要です．
paperChartへのＦＡＱやカスタマイズに関するサポートは，paperChart.netメーリングリストおよびホームページで行っていますし，導入をサポートしてくれる企業も数社あります．
興味のある方は，ぜひ paperChart MLにご参加ください．みなさまと一緒にpaperChartをより使いやすいシステムに育ててゆきたいと思います．